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1型糖尿病患者と2型糖尿病患者における重症低血糖時のバイタルサイン、QT延長、新規に診断された心血管疾患

2013年8月21日

独立行政法人 国立国際医療研究センター

米国糖尿病学会機関誌『Diabetes Care』掲載予定

研究の背景

重症低血糖はけいれん、意識障害、死につながりうる危険な状態である。最近の研究では、糖尿病患者における重症低血糖は心血管疾患や死亡のリスクを上昇させる可能性が示唆されている。また、重症低血糖が致死的不整脈を誘発する可能性も考えられている。しかしながら、重症低血糖時の全身状態や合併症などに関する詳細な報告がなく、重症低血糖に関して不明な点が多いのが現状である。

目的

今回の研究では糖尿病患者における重症低血糖時のバイタルサイン、QT間隔、新規に診断された心血管疾患を中心に評価し、重症低血糖時の全身状態を系統的に詳細に調査することが目的である。

方法

2006年1月から2012年3月までに当院に救急搬送された重症低血糖患者をレトロスペクティブに調査し、重症低血糖患者の全身状態や合併症、その後の短期的な臨床経過をカルテ、血液・尿検査、心電図、画像検査等で評価した。重症低血糖は自力での改善が不可能でブドウ糖静注等の医学的な介入を要する状態と定義した。来院時に心肺停止の状態であった患者は除外し、対象者は来院から状態が安定し病院を離れるか死亡するまでフォローした。

結果

救急外来に救急車で搬送された59,602症例がスクリーニングされ、重症低血糖と診断された414症例が対象となった。血糖値の中央値(四分位範囲)は1型糖尿病群(T1DM、n = 88)と2型糖尿病群(T2DM、n = 326)でそれぞれ32(24-42)ミリグラム/デシリットルと31(24-39)ミリグラム/デシリットルで有意差は認められなかった(P = 0.59)。

重症低血糖時のT1DM群とT2DM群の各群において、重症高血圧(≥180/120 mmHg)は19.8% と38.8% (P = 0.001)、低体温(<35.0 ℃)は18.0%と22.6% (P = 0.37)、低K血症(<3.5 mEq/L)は42.4%と36.3%(P = 0.30)、QT延長(QTc ≥0.44秒)は50.0%と59.9% (P = 0.29)で認めた。

重症低血糖時に新規に診断された心血管疾患とその後の死亡はT2DM群においてのみ認められ、それぞれ1.5%と1.8%であった。また、両群とも重症低血糖時に外傷の合併を5%以上で認め、T2DM群においては新規に診断された心房細動の合併も4.3%で認めた。T2DM群の死亡例と生存例の血糖値はそれぞれ18(14-33)ミリグラム/デシリットルと31(24-39)ミリグラム/デシリットルであり明らかな有意差を認めた(P = 0.02)。

結論

重症低血糖を呈した1型糖尿病患者と2型糖尿病患者は心血管疾患、致死的不整脈、死につながりうる危機的状態を経験していた。

本研究の概要・意義

今まで詳細が不明であった重症低血糖患者の全身状態やその後の臨床経過について、1型糖尿病と2型糖尿病に分類し調査したことで、それぞれの重症低血糖時の病態の一端を解明することができた。1型糖尿病と2型糖尿病で重症低血糖時の状態が異なるということだけでなく、重症低血糖が心血管疾患、致死的不整脈、死といった重篤なイベントにつながりうる危機的状態であることも示すことができた。本研究は今後の日常診療や臨床研究に多大な影響を与え医学の発展に大きく貢献すると考えられる。

  1. 重症低血糖時の血圧
    重症低血糖時の血圧

  2. 重症低血糖時のイベント
    イベントT1DM(n=88)T2DM(n=326)P値
    重症高血圧 (≥180/120 mmHg) 19.8% 38.8% 0.001
    低体温 (<35.0 ℃) 18.0% 22.6% 0.37
    低カリウム血症 (<3.5 mEq/L) 42.4% 36.3% 0.30
    QT延長 (QTc ≥0.44 秒) 50.0% 59.9% 0.29
    新規の心血管疾患 0% 1.5% 0.58
    新規の心房細動 0% 4.3% 0.04
    重症低血糖時の外傷 5.8% 5.8% 0.95
    外傷性くも膜下出血 0% 0.6% 1.00
    骨折 0% 0.6% 1.00
    重症低血糖後の死亡 0% 1.8% 0.34

今後の展望

今回の研究により1型糖尿病患者と2型糖尿病患者の重症低血糖時の危機的状態を示すことができた。今後、さらなる重症低血糖の病態解明だけでなく、重症低血糖を回避しながら良好に血糖を管理しうる糖尿病治療が期待される。

発表雑誌

雑誌名:Diabetes Care
論文名:Vital Signs, QT Prolongation, and Newly Diagnosed Cardiovascular Disease during Severe Hypoglycemia in Type 1 and Type 2 Diabetic Patients
掲載日:in press. Diabetes CareにOnline Ahead of Printで掲載中
著者:辻本 哲郎, 本田 律子, 梶尾 裕, 岸本 美也子, 能登 洋, 蜂谷 玲未, 木村 昭夫, 加計 正文, 野田 光彦.
責任著者:野田 光彦

参照URL

http://care.diabetesjournals.org/content/early/2013/08/06/dc13-0701.abstract

本件に関するお問合せ先

国立国際医療研究センター 糖尿病研究部
責任著者役職名:野田 光彦 (のだ みつひこ)
電話:03-5273-6930(直通)
E-mail:mnoda@hosp.ncgm.go.jp
〒162-8655 東京都新宿区戸山1-21-1

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