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糖尿病研究センター

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重症低血糖発作による心血管病リスクに関するメタアナリシス

2014年7月26日

独立行政法人 国立国際医療研究センター

英国医師会雑誌『BMJ』掲載予定

研究の背景

疫学研究結果より慢性的な高血糖は心血管病の危険因子と考えられていたが、ACCORD試験では厳格な血糖管理により総死亡が約22%増加するという結果が報告された。この報告以来、厳格な血糖管理で高頻度に出現する重症低血糖が心血管イベントを誘因したために総死亡が増加した、という可能性が提唱され、重症低血糖と心血管イベントとの関係が関心を集めている。

重症低血糖の心血管病リスクに及ぼす影響をランダム化比較試験で検証することは不可能である。しかし、観察研究におけるバイアスの程度を定量的に評価するバイアス分析を行うことにより、重症低血糖が心血管病の危険因子となりうるか否かの検討が可能である。

目的

2型糖尿病患者における重症低血糖と心血管病リスクとの関連についてメタアナリシスとバイアス分析で検討した。

方法

電子データベースで文献を網羅的に検索・収集し、各研究結果をメタアナリシスした。さらに、重症低血糖は、併存する重篤疾患に影響を受けている可能性があるため、重篤疾患併存によるバイアスの影響をバイアス分析により定量的に評価した。

結果

6研究が当該目的に合致し、対象者数は合計903,510名で、重症低血糖は0.6-5.8%の頻度で発生していた。メタアナリシスの結果、重症低血糖の心血管病リスクは2.05倍 (95% 信頼区間 1.74-2.42)であった。バイアス分析では、重症低血糖発生群で重篤疾患併存頻度が10倍以上で、重篤疾患と心血管病リスクとの相対危険度が10倍以上でない限り、重症低血糖は心血管病リスク上昇と関連することが示された。

結論

心血管病予防のためにも、重症低血糖を起こさずに血糖管理を行うことが有効であることが示唆された。

本研究の概要・意義

全6件の論文・対象者数903,510名のメタアナリシスにより、2型糖尿病患者において、重症低血糖は心血管病リスクの危険因子となりうることが示された。また、本研究結果は、2型糖尿病において重症低血糖を予防することは、心血管病発症予防のためにも重要であることが示唆された。

  1. 重症低血糖は0.6-5.8%の頻度で発生していた。
  2. 重症低血糖の心血管病リスクは2.05倍 (95% 信頼区間 1.74-2.42)であった。全6件の研究において、重症低血糖は心血管病リスク上昇と関連していた。
    重症低血糖発作による心血管病リスクに関するメタアナリシス1
  3. バイアス分析では、併存する重篤疾患が重症低血糖と心血管病リスクの両方と極めて強く関連していない限り、重症低血糖は心血管病リスク上昇と関連することが示された。
    重症低血糖発作による心血管病リスクに関するメタアナリシス2

今後の展望

今後、重症低血糖の予防策を明らかにし、重症低血糖を起こさずに血糖管理を行うことにより、2型糖尿病患者における心血管病発生の抑制につながることが期待される。

発表雑誌

雑誌名:BMJ
論文名:Severe Hypoglycaemia and Cardiovascular Disease:A Systematic Review and Meta-Analysis with Bias Analysis
掲載日7月31日(英国標準時間)に掲載予定(時間未定)
著者:後藤 温, Onyebuchi A. Arah, 後藤 麻貴, 寺内 康夫, 野田 光彦.
責任著者:野田 光彦

参照URL

http://www.bmj.com/cgi/doi/10.1136/bmj.f4533(外部リンク)

本件に関するお問合せ先

国立国際医療研究センター 糖尿病研究部
責任著者役職名:野田 光彦 (のだ みつひこ)
電話:03-5273-6930(直通)
E-mail:mnoda@hosp.ncgm.go.jp
〒162-8655 東京都新宿区戸山1-21-1

取材に関するお問合せ先

国立国際医療研究センター 企画戦略局 広報企画室
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