コンテンツにジャンプ

糖尿病研究センター

トップページ > ニュース・トピックス > セミナー・講演会 > Decoding noncoding RNA code:

Decoding noncoding RNA code:
細胞内構造構築機能を中心に

転写代謝セミナーを開催します。

日時

2015年11月18日(水曜日) 17:00-18:00

場 所

研究所B1F・中会議室

演 者

廣瀬 哲朗 先生(北海道大学遺伝子病制御研究所 RNA生体機能分野教授)

内 容

ポストゲノム時代に入り、それまで“ジャンク”と考えられていたゲノムの大部分の領域から、正体不明なノンコーディングRNA (ncRNA)が多数合成されていることが明らかにされた。これらのncRNAは「ゲノムの暗黒物質」とも呼ばれ、その未知なる機能に注目が集まっている。

ncRNAは、ヒトをはじめとした複雑な生き物でより多く産生されており、また近縁種間での保存性が必ずしも高くないことから、生物が種毎にもつ生理現象の多様性を生み出す遺伝プログラムに関与している可能性が提唱されている。ncRNAは、mRNAのように蛋白質に翻訳されることなくRNAのまま機能している。よってncRNAの配列中には、mRNAで用いられているアミノ酸配列をコードする遺伝暗号とは全く異なる配列規則性が存在し、それによってncRNAの機能が規定されていると考えられる。よってncRNA研究とは、ゲノム中にあって未だに真意が理解されていない「新しい遺伝暗号の解読」と位置づけることができる。

近年の研究によって、ncRNAには確固たる生体制御機能が備わっている例が次々と報告されている。しかし一方で、これまでに見つかったncRNAの機能は多岐に渡っており、ncRNAとは共通した機能と作用機構をもつ均一なRNAの集団ではなく、多彩なRNA種を単純に「蛋白質情報をコードしないRNA」として集めただけの雑多な集団に過ぎないことが認識され始めている。

今後、これらのncRNAを体系的に理解するには、ncRNA集団中のどのRNA同士が類似した機能を有するのかを明らかにし、それぞれの機能を規定するRNA配列中の共通ルールを読み解くことが必要である。本講演では、こうして始まったばかりのncRNA研究の現状を俯瞰しつつ、この暗黒世界に光をあてるために我々が進めている細胞内構造の骨格としての新規ncRNA機能に関する研究の現状を紹介したい。