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研究紹介
臓器障害研究部は、糖尿病の慢性合併症における臓器障害の調査・研究、及び診断・治療法の開発を行うことを目的として、2009年10月に発足した。2010年1月には、糖尿病を中心とする生活習慣病に伴う慢性臓器障害に関する細胞生物学的・分子生物学的研究を推進するために、慢性障害研究室も新設され、糖尿病性細小血管症の新規治療及び診断法の開発を目指して研究を行っている。
研究内容
プロテオーム解析による糖尿病性細小血管症関連因子の探索(国立国際医療研究センター糖尿病研究部、富山大学医学部第一内科、JR東京総合病院 糖尿病・内分泌内科との共同研究)
近年、肥満やメタボリックシンドローム、糖尿病といった代謝疾患が急増しているが、これらの疾患は心筋梗塞、脳卒中、閉塞性動脈硬化症などの動脈硬化性疾患や脂肪肝などの合併症を引き起こす。さらに糖尿病では、糖尿病に固有な微細血管の機能及び形態異常が生じ、これは糖尿病性細小血管症と呼ばれる。糖尿病性細小血管症の予防及び治療は代謝疾患罹患患者のQOL及び生存率向上のために非常に重要であり、日常診療の現場でその病期や予後・進行性などを診断可能なバイオマーカーが開発されれば、その意義は高い。そこで我々は糖尿病性細小血管症の早期診断マーカー開発を目的として、2型糖尿病患者、ならびに糖尿病性細小血管症を呈する2型糖尿病患者より血清、尿検体を約900例収集し、これらの臨床検体を用いたプロテオーム解析により糖尿病性細小血管症に関連する蛋白質・ペプチドの探索を行っている。これまでに我々は、糖尿病腎症患者尿検体を用いた非標識定量プロテオーム解析により、尿中アルブミン・クレアチニン比と関連を示す尿中蛋白質を複数種同定し、これらの蛋白質を指標にすることにより糖尿病腎症を早期に判別できる可能性を示した。また、主に肝臓で産生される亜鉛結合蛋白質leukocyte cell-derived chemotaxin 2 (LECT2)の血清濃度測定を可能とするELISA系の構築に成功し、血清LECT2濃度が肥満やインスリン抵抗性と正の相関を示すことを明らかにした(BioScience Trends. 7:276-83, 2013)。一方、2型糖尿病モデルマウス血清を用いた定量プロテオーム解析により2型糖尿病の発症早期より発現亢進が認められる血中蛋白質serine (or cysteine) peptidase inhibitor, clade A, member 3を同定し、この蛋白質が血管内皮細胞の細胞透過性を亢進する作用があることを見出した(J Proteomics. 84:40-51, 2013)。
糖尿病(合併症)の新規バイオマーカーを始めとする因子群に着目した、糖尿病(合併症)の病態形成機序に関する研究
糖尿病の新規予防法・治療法開発を目標に、糖尿病(合併症)の新規バイオマーカーを始めとする因子群を中心として糖尿病(合併症)の発症・進展における分子基盤の解明を行っている。現在、糖尿病や糖尿病腎症に関連する因子に着目した遺伝子改変マウスを作製し、当該因子の病態形成に与える影響を解析している。また、疾患モデル動物や培養細胞等を用いて糖尿病(合併症)の発症・進展を規定する新規因子群の同定や発現制御機構の解明に取り組んでいる。